SNSでの写真・動画投稿、どこまでOK?肖像権の基本と注意点
インターネットを使った情報発信が当たり前になった現代では、SNSで写真や動画を共有する機会も多いかと思います。しかし、「この写真を投稿しても大丈夫かな?」「友人の顔がはっきり映っているけれど、許可は必要?」といった不安を感じたことはないでしょうか。
特にコンテンツ初心者の方にとって、他人の写った写真や動画を安易に投稿してしまい、思わぬトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。そこで今回は、SNSでの写真・動画投稿に欠かせない「肖像権」という考え方について、その基本と、安心して発信するための具体的な注意点、そして対策を分かりやすく解説していきます。
肖像権とは、人が持つ「自分らしさ」を守る権利
まず、「肖像権」とは何かをご説明します。肖像権とは、人が無断で自分の姿や顔を撮影されたり、その写真や動画を公開・利用されたりしないように主張できる権利のことです。法律で明確に定められた権利というよりは、プライバシー権の一種として判例上認められてきた考え方です。
簡単に言えば、「自分の顔や姿を勝手に使われない」という、個人が持っている大切な権利と理解してください。
似た言葉に「著作権」がありますが、これとは少し違います。 * 著作権: 作品(文章、絵、写真、音楽など)を作った人が持つ権利です。 * 肖像権: 人そのもの、つまり「あなた自身の姿や顔」に対して与えられている権利です。
ですので、あなたが撮った写真の著作権はあなたにありますが、その写真に写っている人物には肖像権がある、ということになります。
肖像権侵害となるのはどんな時でしょうか?
肖像権侵害は、一般的に以下のような状況で問題となります。
- 無許可での撮影や公開: 本人の許可なく写真や動画を撮影したり、それをSNSなどで公開したりする行為です。
- 公開による精神的苦痛: たとえ許可を得て撮影したものであっても、その写真や動画を公開することで、写っている人が精神的な苦痛を感じるような場合です。例えば、本人が恥ずかしいと感じるような姿が写っている場合や、私生活を不必要に暴露するような場合が該当します。
- 商業目的での利用: 本人の許可なく、写っている人物の肖像を商品や広告などに利用し、利益を得る行為です。これは「パブリシティ権」とも呼ばれ、特に有名人や著名人の肖像権を保護する際に重要な要素となります。
では、日常生活でよくあるケースをいくつか見てみましょう。
- 友人との食事風景を撮影し、SNSに投稿する: 友人の顔がはっきりと写っている場合、原則として友人の許可を得るのがマナーであり、肖像権への配慮となります。
- 街中で見かけたおしゃれな人を無断で撮影し、SNSに投稿する: これは本人の許可がない限り、肖像権侵害となる可能性が高い行為です。
- 背景に通行人が写り込んだ風景写真をSNSに投稿する: 個人の特定が難しく、あくまで背景の一部として偶然写り込んだだけであれば、肖像権侵害となる可能性は低いですが、状況によっては注意が必要です。
SNSで写真や動画を投稿する際に気をつけたいポイント
コンテンツ初心者の方が安心してSNSに写真や動画を投稿するために、以下のポイントを意識してください。
1. 人物が特定できる場合は必ず許可を得る
友人、知人、家族など、個人が特定できる人物が写っている写真や動画をSNSに投稿する際は、必ず事前に本人から許可を得ましょう。特に、以下のようなケースではより慎重な配慮が求められます。
- 子どもの写真や動画: 未成年者は自分で判断することが難しいため、必ず保護者の方に許可を取りましょう。
- プライベートな情報が含まれる写真: 特定の場所(自宅、職場など)や、個人の趣味嗜好が明確にわかるような写真の場合、本人が公開を望まない可能性もあります。
2. 「映り込み」にも配慮を
イベント会場や観光地などで風景を撮影する際、意図せず多くの人が背景に映り込むことがあります。このような「映り込み」の場合、すべての人に許可を取るのは現実的ではありません。
判断の基準としては、以下の点が挙げられます。
- 個人の特定性: 映り込んでいる人が、その写真や動画を見ただけで誰であるか特定できるか。
- 写り方の比重: 写真や動画の主役が風景であり、人物はあくまで背景の一部であるか。あるいは、その人物に焦点が当てられているか。
- 撮影場所の状況: 公共の場所か、私的な場所か。
- 公開による影響: その人物が写り込むことで、その人に不利益や精神的苦痛を与える可能性があるか。
一般的に、公共の場所で、特定の人物に焦点が当たっておらず、個人の特定が難しい程度の映り込みであれば、肖像権侵害となる可能性は低いとされています。しかし、不安な場合は、モザイクやぼかし加工を施すなどの配慮をするとより安心です。
3. モザイクやぼかし加工の活用
人物が写り込んだ写真や動画をどうしても公開したいけれど、許可を取ることが難しい場合や、念のため配慮したい場合は、顔の部分にモザイクやぼかし加工を施すことが有効です。最近の画像・動画編集アプリやSNSの機能には、簡単にこうした加工ができるものも多いです。
安心してSNS投稿するための具体的なステップ
ここまでの内容を踏まえ、安心して写真や動画をSNSに投稿するための具体的なステップをご紹介します。
- 人物が特定できる場合は、投稿前に必ず本人に許可を得る。 特に「SNSに投稿していいか」と明確に確認しましょう。
- 許可の記録を残す(推奨)。 口頭での許可でも問題ありませんが、LINEやDMなどのメッセージでやり取りを残しておくと、後々のトラブル防止に繋がります。
- 不安な場合は、公開範囲を限定する。 SNSの機能を使って、特定の友人やグループのみに公開するなど、投稿の公開範囲を限定することも有効な手段です。
- それでも不安な場合は、公開しないか、加工する。 少しでも不安を感じる場合は、その写真や動画の公開を控えるか、モザイクやぼかし加工を施しましょう。
もし自分の肖像権が侵害されたと感じたら
万が一、あなたの肖像権が侵害されたと感じた場合は、以下の対応を検討できます。
- SNSの運営元に通報・報告する: 多くのSNSには、肖像権侵害に関する報告フォームや手順が用意されています。
- 投稿者へ直接削除を依頼する: もし投稿者と連絡が取れる関係であれば、直接削除を依頼することも一つの方法です。その際は、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。
まとめ:相手への配慮が、安心してネットを使うカギ
SNSでの写真・動画投稿における肖像権は、少し複雑に感じるかもしれません。しかし、基本は「写っている人への配慮」を忘れないことです。自分が写っている写真や動画を勝手に公開されたらどう感じるか、という相手の気持ちを想像することが大切です。
- 特定できる人物には許可を得る
- 映り込みには配慮し、必要に応じて加工する
この二点を心がけるだけで、多くのトラブルを未然に防ぎ、安心してインターネットでの情報発信を楽しむことができるでしょう。他人の権利を尊重し、健全なネットライフを送るための第一歩として、ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。