動画やブログで音楽を安心して使うための著作権ルール
コンテンツ制作において、音楽は視聴者の心を掴み、メッセージを効果的に伝えるための強力な要素です。しかし、インターネット上には多種多様な音楽があふれており、それらを安易に利用してしまうと、思わぬ著作権トラブルに巻き込まれる可能性があります。
この記事では、動画やブログで音楽を安心して利用するために、コンテンツ初心者が知っておくべき著作権の基本的なルールと、具体的な注意点について分かりやすく解説します。
音楽にも著作権がある?基本的な考え方
私たちが普段耳にする音楽は、すべて「著作物」として法律で保護されています。著作物とは、思想や感情を創作的に表現したものであり、音楽の場合は、作詞家が書いた歌詞、作曲家が作ったメロディ、編曲家が施したアレンジなどがこれに該当します。
音楽の著作権は、これらの著作物を創作した人(著作者)に自動的に与えられる権利であり、主に以下の2つの権利に分けられます。
- 著作財産権: 著作物を複製したり、インターネット上で公開したりすることでお金を得ることを含む、経済的な権利です。例えば、CDとして販売したり、動画サイトにアップロードしたりする権利などがこれにあたります。
- 著作者人格権: 著作者の名誉や感情を守るための権利で、公表するかどうか、本名で公表するかどうか、作品を勝手に改変されない権利などが含まれます。
これらの権利は、原則として著作者が亡くなってから70年間保護されます。そのため、他人の作った音楽を利用する際には、著作権者の許諾を得ることが基本的に必要となります。
音楽利用で特に気をつけたい3つのポイント
では、具体的にどのような点に注意すれば良いのでしょうか。コンテンツ初心者が間違いやすいポイントを3つご紹介します。
1. 市販されている音楽は基本的に無断利用できません
CDショップで販売されている音楽、音楽配信サイトで購入・ダウンロードした音楽、サブスクリプションサービスで聴ける音楽などは、すべて著作権で保護されています。これらは、個人的に楽しむことを目的として提供されており、自分の動画やブログで公開する目的での利用は、著作権者の許諾なしにはできません。
たとえ購入したものであっても、その音楽をコンテンツに組み込んで公開することは、複製権や公衆送信権といった著作権を侵害する行為にあたる可能性が高いのです。
2. 「フリー音源」や「商用利用可」にも利用条件があります
インターネット上には「著作権フリー」「無料素材」「商用利用可」といった表記のある音楽素材も多数存在します。これらは一見自由に使えるように思えますが、多くの場合、利用条件が定められています。
例えば、以下のような条件が設定されていることがあります。
- クレジット表記の義務: 著作者や素材提供サイトの名前を明記する必要がある。
- 利用範囲の制限: 特定のプラットフォームでのみ利用可能、営利目的での利用は不可、といった制限がある。
- 改変の禁止: 音楽の一部を切り取ったり、速度を変えたりといった編集が認められない。
これらの条件を読み飛ばして利用してしまうと、知らず知らずのうちに規約違反となり、トラブルに発展する可能性があります。必ず利用規約を熟読し、内容を理解した上で利用することが重要です。
3. 短い利用や非営利目的でも著作権侵害になる可能性があります
「少しだけBGMとして使うなら大丈夫だろう」「趣味で作った動画だから収益は発生しないし問題ないはず」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、以下のような誤解は避けるべきです。
- 利用時間の長短: 著作権侵害は、利用時間の長短に関わらず成立する可能性があります。たとえ数秒間の利用であっても、許諾なしに使用すれば問題となり得ます。
- 営利・非営利の区別: 著作権法においては、営利目的か非営利目的かは、著作権侵害の成立要件とは直接関係ありません。趣味の投稿であっても、不特定多数に公開する時点で「公衆送信」に該当し、著作権侵害となる可能性があります。
- 「歌ってみた」「演奏してみた」の注意点: 自分で歌ったり演奏したりしたものでも、その元となる楽曲(原曲)には著作権があります。原曲の著作権者の許諾がなければ、動画を公開することは著作権侵害にあたります。
これらのケースにおいても、著作権者の許諾を得ることが原則です。
安心して音楽を利用するための具体的な方法
では、どのようにすれば安心して音楽をコンテンツで利用できるのでしょうか。いくつかの方法をご紹介します。
1. 著作権フリー音源・素材サイトを活用する
最も手軽な方法の一つが、著作権フリー音源を提供するサイトを利用することです。ただし、前述の通り、これらのサイトにもそれぞれ利用規約がありますので、ダウンロードや利用の前に必ず確認し、条件を守って使いましょう。
2. 商用利用可能な音楽サブスクリプションサービスを利用する
最近では、動画制作やビジネス用途での音楽利用を想定したサブスクリプションサービスも増えています。これらのサービスは、月額料金を支払うことで、サービス内で提供される音楽を商用利用できる許諾が付与されている場合があります。利用する際は、どの範囲まで利用が認められているのか、サービスごとの利用規約をよく確認してください。
3. 著作権管理団体を通じて許諾を得る
市販の楽曲などを利用したい場合は、JASRAC(日本音楽著作権協会)のような著作権管理団体を通じて、著作権者からの許諾を得る方法があります。これは個別の楽曲ごとに手続きが必要となり、費用も発生しますが、正規の方法で安心して利用したい場合に検討する選択肢です。
4. オリジナル楽曲を制作・依頼する
最も自由度が高く、著作権トラブルの心配がないのは、自分で楽曲を制作するか、音楽制作者に依頼してオリジナル楽曲を使用することです。これにより、著作権は自分自身、あるいは依頼先にあり、利用について一切の制約がなくなります。
万が一、著作権侵害を指摘されたら
もし、あなたのコンテンツで使った音楽について、著作権者から削除要請や問い合わせがあった場合でも、焦らず冷静に対応することが大切です。
- まずは事実確認: どの楽曲のどの部分が問題とされているのかを確認しましょう。
- 迅速な対応: 著作権侵害が事実であれば、速やかに問題の音楽を削除したり、コンテンツの公開を停止したりするなどの対応を取りましょう。誠実な対応が、さらなるトラブルの拡大を防ぎます。
- 専門家への相談: 不安な場合や、相手方との交渉が必要な場合は、弁護士など法律の専門家に相談することを検討してください。
まとめ:ルールを理解し、安心してコンテンツ制作を
音楽はコンテンツを豊かにする素晴らしいツールですが、その利用には著作権という大切なルールが伴います。
コンテンツ初心者にとって、法律用語や細かい規定は難しく感じられるかもしれませんが、ここでご紹介した基本的な考え方と注意点を理解し、以下の2点を常に意識することが、安心して音楽を利用し、コンテンツ制作を楽しむための鍵となります。
- 利用したい音楽の著作権状況を必ず確認する。
- 利用規約を熟読し、定められたルールを遵守する。
これらの基本を守り、あなたのコンテンツをもっと魅力的なものにしてください。